試験問題の引用
令和4年の試験問題は国土地理院HPから引用しています。
https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/past.html
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第24問 問題
地理空間情報の防災における利用について,次の問いに答えよ。
地形と自然災害の発生リスクには,密接な関係がある。例えば,山地や崖・段丘崖の下方にあり,崖崩れや土石流などによって土砂が堆積してできた「山麓堆積地形」においては,大雨によ
る土石流災害のリスクがあり,地盤が不安定なため大雨や地震による崖崩れにも注意が必要である。
身のまわりの地形が示すその土地の成り立ちと,その土地が本来持っている自然災害リスクについて,誰もが簡単に確認できるようにする目的で,国土地理院のウェブ地図「地理院地図」から「地形分類」を示す地図を公開しており,災害の種類ごとの「指定緊急避難場所」を重ね合せ表示することで事前に避難ルートを調べることができる。
表 24 は,地形分類,土地の成り立ち及び地形から見た自然災害リスクを説明したものである。
ア ~ エ に入る「地形から見た自然災害リスク」を説明した次のページのa~dの文の組合せとして最も適当なものはどれか。次のページの中から選べ。
a.洪水に対しては比較的安全だが,大規模な洪水では浸水することがある。縁辺部では液状化のリスクがある。
b.大雨の際に一時的に雨水が集まりやすく,浸水のおそれがある。地盤は周囲(台地・段丘など)より軟弱な場合があり,特に周辺が砂州・砂丘の場所では液状化のリスクがある。
c.河川の氾濫に注意が必要である。地盤は海岸に近いほど軟弱で,地震の際にやや揺れやすい。液状化のリスクがある。沿岸部では高潮に注意が必要である。
d.山地からの出水による浸水や,谷口に近い場所では土石流のリスクがある。比較的地盤は良いため,地震の際には揺れにくい。下流部では液状化のリスクがある。
選択肢
ア | イ | ウ | エ | |
1. | a | b | c | d |
2. | b | a | d | c |
3. | d | b | c | a |
4. | b | a | c | d |
5. | d | a | b | c |
第24問 解答・解説
正解は選択肢5です。以下、補足と解説。
地理空間情報の防災活用は最近出題が増えています。
用語の意味を確認していきましょう。
事前知識の確認
問題文前段について解説します。
山麓堆積地形
地形と自然災害の発生リスクには,密接な関係がある。例えば,山地や崖・段丘崖の下方にあり,崖崩れや土石流などによって土砂が堆積してできた「山麓堆積地形」においては,大雨によ
る土石流災害のリスクがあり,地盤が不安定なため大雨や地震による崖崩れにも注意が必要である。
山麓・・・山地と平地との境界部。山の下の方。
山麓堆積地形
土地の成り立ち
山地や崖・段丘崖(だんきゅうがい)の下方にあり、山地より斜面の緩やかな土地。崖崩れや土石流などによって土砂が堆積してできる。この地形の自然災害リスク
国土地理院HP「ベクトルタイル「地形分類」 ―身の回りの土地の成り立ちと自然災害リスクがワンクリックで分かります―」より引用
大雨により土石流が発生するリスクがある。地盤は不安定で、地震による崖崩れにも注意。
図-3.1,3.2,3.5は国土地理院「治水地形分類図解説書」より引用
覚えている方も多いかと思います、令和3年7月3日(土)に静岡県熱海市伊豆山で土砂崩れが発生しましたが、その場所の地形分類が「山麓堆積地形」です。
この災害があったから、今年の測量士補試験問題文の前段で触れたのだと思います。
地理院地図の活用
身のまわりの地形が示すその土地の成り立ちと,その土地が本来持っている自然災害リスクについて,誰もが簡単に確認できるようにする目的で,国土地理院のウェブ地図「地理院地図」から「地形分類」を示す地図を公開しており,災害の種類ごとの「指定緊急避難場所」を重ね合せ表示することで事前に避難ルートを調べることができる。
地理院地図をご覧になったことがありますでしょうか?
ここでは上記データの表示方法を記したいと思います。ぜひ実際に操作してみてください。
①地形分類を表示させる
1)左上の「地図」ボタンをクリック。
2)「土地の成り立ち」を選択
3)「地形分類(ベクトルタイル提供実験中)」を選択
4)「地形分類(自然地形)」を選択
②指定緊急避難場所を表示させる
1)左上「トップ」を選択
2)「災害伝承・避難場所」を選択
3)「指定緊急避難場所」を選択
4)表示させたいものを選択(例「指定緊急避難場所(洪水)」)
解答
土地の成り立ち | 地形から見た自然災害リスク | |
扇状地 | 山地の谷の出口から扇状に広がる緩やかな斜面。谷口からの氾濫によって運ばれた土砂が堆積してできる。 | 山地からの出水による浸水や、谷口に近い場所では土石流のリスクがある。比較的地盤は良いため、地震の際には揺れにくい。下流部では液状化のリスクがある。 |
自然堤防 | 現在や昔の河川に沿って細長く分布し、周囲より0.5~数メートル高い土地。河川が氾濫した場所に土砂が堆積してできる。 | 洪水に対しては比較的安全だが、大規模な洪水では浸水することがある。縁辺部では液状化のリスクがある。 |
凹地・浅い谷 | 台地や扇状地、砂丘などの中にあり、周辺と比べてわずかに低い土地。小規模な流水の働きや、周辺部に砂礫が堆積して相対的に低くなる等でできる。 | 大雨の際に一時的に雨水が集まりやすく、浸水のおそれがある。地盤は周囲(台地・段丘など)より軟弱な場合があり、とくに周辺が砂州・砂丘の場所では液状化のリスクがある。 |
氾濫平野 | 起伏が小さく、低くて平坦な土地。洪水で運ばれた砂や泥などが河川周辺に堆積したり、過去の海底が干上がったりしてできる。 | 河川の氾濫に注意。地盤は海岸に近いほど軟弱で、地震の際にやや揺れやすい。液状化のリスクがある。沿岸部では高潮に注意。 |
扇状地、自然堤防、氾濫平野
図-3.6は国土地理院「治水地形分類図解説書」より引用
この問題ですが、地理院地図HP「ベクトルタイル「地形分類」 ―身の回りの土地の成り立ちと自然災害リスクがワンクリックで分かります―」から出題されています。下記にも一覧表を作成しましたので試験勉強にご活用ください。
地形分類 | 土地の成り立ち | 地形から見た自然災害リスク |
山地 | 尾根や谷からなる土地や、比較的斜面の急な土地。山がちな古い段丘崖の斜面や火山地を含む。 | 大雨や地震により、崖崩れや土石流、地すべりなどの土砂災害のリスクがある。 |
崖・段丘崖 | 台地の縁にある極めて急な斜面や、山地や海岸沿いなどの岩場。 | 周辺では大雨や地震により、崖崩れなどの土砂災害のリスクがある。 |
地すべり地形 | 斜面が下方に移動し、斜面上部の崖と不規則な凹凸のある移動部分からなる土地。山体の一部が重力により滑ってできる。 | 大雨・雪解けにより多量の水分が土中に含まれたり、地震で揺れたりすることで、土地が滑って土砂災害を引き起こすことがある。 |
台地・段丘 | 周囲より階段状に高くなった平坦な土地。周囲が侵食により削られて取り残されてできる。 | 河川氾濫のリスクはほとんどないが、河川との高さが小さい場合には注意。縁辺部の斜面近くでは崖崩れに注意。地盤は良く、地震の揺れや液状化のリスクは小さい。 |
山麓堆積地形 | 山地や崖・段丘崖の下方にあり、山地より斜面の緩やかな土地。崖崩れや土石流などによって土砂が堆積してできる。 | 大雨により土石流が発生するリスクがある。地盤は不安定で、地震による崖崩れにも注意。 |
扇状地 | 山地の谷の出口から扇状に広がる緩やかな斜面。谷口からの氾濫によって運ばれた土砂が堆積してできる。 | 山地からの出水による浸水や、谷口に近い場所では土石流のリスクがある。比較的地盤は良いため、地震の際には揺れにくい。下流部では液状化のリスクがある。 |
自然堤防 | 現在や昔の河川に沿って細長く分布し、周囲より0.5~数メートル高い土地。河川が氾濫した場所に土砂が堆積してできる。 | 洪水に対しては比較的安全だが、大規模な洪水では浸水することがある。縁辺部では液状化のリスクがある。 |
天井川 | 周囲の土地より河床が高い河川。人工的な河川堤防が築かれることで、固定された河床に土砂が堆積してできる。 | ひとたび天井川の堤防が決壊すれば、氾濫流が周辺に一気に拡がるため注意が必要。 |
砂州・砂丘 | 主に現在や昔の海岸・湖岸・河岸沿いにあり、周囲よりわずかに高い土地。波によって打ち上げられた砂や礫、風によって運ばれた砂が堆積することでできる。 | 通常の洪水では浸水を免れることが多い。縁辺部では強い地震によって液状化しやすい。 |
凹地・浅い谷 | 台地や扇状地、砂丘などの中にあり、周辺と比べてわずかに低い土地。小規模な流水の働きや、周辺部に砂礫が堆積して相対的に低くなる等でできる。 | 大雨の際に一時的に雨水が集まりやすく、浸水のおそれがある。地盤は周囲(台地・段丘など)より軟弱な場合があり、とくに周辺が砂州・砂丘の場所では液状化のリスクがある。 |
氾濫平野 | 起伏が小さく、低くて平坦な土地。洪水で運ばれた砂や泥などが河川周辺に堆積したり、過去の海底が干上がったりしてできる。 | 河川の氾濫に注意。地盤は海岸に近いほど軟弱で、地震の際にやや揺れやすい。液状化のリスクがある。沿岸部では高潮に注意。 |
後背低地・湿地 | 主に氾濫平野の中にあり、周囲よりわずかに低い土地。洪水による砂や礫の堆積がほとんどなく、氾濫水に含まれる泥が堆積してできる。 | 河川の氾濫によって周囲よりも長期間浸水し、水はけが悪い。地盤が軟弱で、地震の際の揺れが大きくなりやすい。液状化のリスクがある。沿岸部では高潮に注意。 |
旧河道 | かつて河川の流路だった場所で、周囲よりもわずかに低い土地。流路の移動によって河川から切り離されて、その後に砂や泥などで埋められてできる。 | 河川の氾濫によって周囲よりも長期間浸水し、水はけが悪い。地盤が軟弱で、地震の際の揺れが大きくなりやすい。液状化のリスクが大きい。 |
落堀 | 河川堤防沿いにある凹地状の土地。洪水のときに、堤防を越えた水によって地面が侵食されてできる。 | 河川の氾濫や堤防からの越水に注意。周囲の地盤に比べて軟弱なことが多く、液状化のリスクが大きい。 |
河川敷・浜 | 調査時の河川敷や、調査時または明治期等に浜辺、岩礁である土地。 | 河川の増水や高波で冠水する。河川敷は液状化のリスクが大きい。 |
水部 | 調査時において、海や湖沼、河川などの水面である場所。 | |
旧水部 | 江戸時代または明治期から調査時までの間に海や湖、池・貯水池であり、過去の地形図などから水部であったと確認できる土地。その後の土砂の堆積や土木工事により陸地になったところ。 | 地盤が軟弱で、液状化のリスクが大きい。沿岸部では高潮に注意。 |
正解は選択肢5です。
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